電気工事士の採用にお困りの方は「工事士.com」にご相談ください! ↗

【2026年最新】昨年義務化された「熱中症対策」は万全ですか? 過去の労災事例と、企業を襲う多額の損害賠償リスク

いよいよ本格的な夏が近づいてきました。電気工事の現場において、これからの季節で最も警戒すべきリスクが「熱中症」です。

ご存知の通り、2025年6月に労働安全衛生規則が改正され、企業に対する熱中症対策が義務化されました。対策が不十分なまま従業員が熱中症で倒れ、入院や死亡といった事態に至った場合、企業側が「安全配慮義務違反」を問われ、数千万円規模の損害賠償を命じられるケースも実際に発生しています。「現場で気をつけてね」と声をかけるだけでは、もはや企業を守りきれない時代です。

そこで本記事では、最新の労災データと法改正のポイント、そして実際の事例を通じて、企業が今すぐ確認すべきリスクを解説します。

この記事で分かること
  • 建設業における熱中症のリスクデータ
  • 法改正による熱中症予防対策の基本
  • 建設業の熱中症による労働災害事例
  • 自社の熱中症対策状況

▶︎ 自社の対策状況をすぐに確認したい方は、「自社の熱中症リスク診断」をお試しください。

目次

建設業がもっとも危ない!熱中症はもう「他人事」ではない

厚生労働省の調査によると、職場における熱中症による死傷者数(死亡・休業4日以上)は、2025年に1,803人となり、2005年の統計開始以来、最多を記録しました。近年は猛暑日が「特別な日」ではなくなったことを背景に、増加傾向が続いています。

さらに注目すべきは、業種別のデータです。MS&ADインターリスク総研の調査では、2019年から2023年の5年間で熱中症による死傷者数・死亡者数がもっとも多い業種は「建設業」でした。次いで製造業、運送業が続きます。電気工事をはじめとする建設関連の現場は、屋外作業や高温環境での作業が多く、構造的に熱中症リスクが高い業種であるという事実は、決して見過ごせません。

※出典:労災リスク・インフォメーション(MS&ADインターリスク総研株式会社)

なかには「うちは現場で水分補給や休憩を徹底しているから大丈夫」と考えている経営者の方も多いかもしれません。しかし、本当に重要なのは、その対策が「法律上求められる水準」を満たしているかどうかです。

法改正で求められる、熱中症予防対策の基本「3つの管理」

2025年6月1日、労働安全衛生規則が改正され、職場における熱中症対策が義務化されました。企業には、熱中症発生時の報告体制の整備、対応手順の作成、関係者への周知が義務付けられ、違反した場合は罰則が科される可能性もあります。

対象となるのは、以下の条件です。

WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて作業が見込まれる」現場。

※WBGT:湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature)の略。1954年にアメリカで提案された、熱中症を予防するための暑さ指数。

電気工事の現場では、夏場の屋外作業や、空調のない屋内・天井裏での作業などが、まさにこの基準に該当するケースが多いと考えられます。

では、この体制を実際に機能させるために、現場で何を整えればよいのでしょうか。

厚生労働省の実施要綱では、熱中症予防対策の基本として、次の「3つの管理」が示されています

■ 熱中症予防対策の基本「3つの管理」

対策主な具体策
作業環境管理• 簡易な屋根や通風・冷房設備、ミストシャワー等の散水設備の設置
• 作業場所の近くに、冷房を備えた休憩場所または日陰等の涼しい休憩場所の確保
• 氷や冷たいおしぼり、飲料水・スポーツドリンク・塩飴など、水分・塩分を補給できる物品の備え付け
作業管理• WBGT基準値に応じた作業時間の短縮・休憩の取得・作業中止の判断
• 労働者の心拍数・体温及び尿の回数や色等の身体状況、水分及び塩分の摂取状況の確認
• 透湿性と通気性の良い服装の準備・身体を冷却する機能を持つ服の着用
健康管理• 熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する労働者への配慮
• 当日の朝食の未摂取・睡眠不足・前日の多量の飲酒などが熱中症の発症に影響を与えるといった指導や健康相談
• 作業中の労働者の健康状態の確認作業として、頻繁な巡視や声かけの徹底

※労災リスク・インフォメーション(MS&ADインターリスク総研株式会社)

つまり、「水分補給をさせる」「休憩を取らせる」というのは、あくまでも熱中症対策のうちのごく一部に過ぎません。休憩場所の設備は十分か、WBGT値に応じて作業を中止する判断基準を持っているか、持病のある従業員への配慮ができているか。これら全てを満たして初めて、法律が求める水準の対策と言えます。

自社がこの3つの管理を本当に実行できているかどうか、読み進める前に一度振り返ってみてください。

\ 自社の対策状況をすぐに確認したい方はこちら!

無料・簡単3分でできます!!

【事例で見る】現場対策だけでは熱中症リスクを回避できない現実

実際に、現場における個別の熱中症対応があったにも関わらず、重大な事故に至ってしまった事例を紹介します。

【事例1】
猛暑の炎天下の作業場所での作業中、熱中症によって死亡

とある現場で、新築工事における足場の解体作業および資材の搬出作業中に、作業員が熱中症によって死亡する事故が発生。当日は最高気温37.4度に達する猛暑で、作業員の異変に気づいた同僚が一度は休憩を取らせ、現場責任者も作業再開後に再び異変を察知して作業を中止させていた。しかし、その後症状が悪化し、搬送先の病院で多臓器不全のため死亡した。

※参考:職場のあんぜんサイト 労働災害事例 No.100740(厚生労働省)

この事例で指摘された原因は、「現場の安全管理者に熱中症の危険性に対する認識が不足していた」こと、そして「本人や周囲が体調不良を「熱中症である」と正しく認識できず、緊急搬送の判断が遅れた」ことでした。

つまり、休憩や声かけといった個別対応はあったものの、作業中止の判断基準や、安全管理者・作業員への熱中症教育が十分に機能していなかった可能性がうかがえます。

また、こうした事故は、企業に対する高額な損害賠償請求に直結することもあります。次の事例を見てみましょう。

【事例2】
造園業での作業中、熱中症で死亡した従業員の遺族が約3,600万円の損害賠償を請求

造園業に雇用された従業員(事故当時34歳)が、伐採・清掃作業中に熱中症により死亡。その遺族が、企業側の安全配慮義務違反を根拠に損害賠償を請求した。大阪高等裁判所は企業側の責任を認定し、逸失利益・慰謝料・弁護士費用等を含む約3,600万円の損害賠償を命じた(平成28年1月21日判決)。

※参考:保険での対策も見直してみませんか?(三井住友海上火災保険株式会社)

このように、熱中症による事故は企業に対する高額な損害賠償請求へと発展するリスクがあります。

しかし、「万が一のときは労災保険があるから大丈夫」と考えている経営者の方もいるかもしれませんが、実は注意が必要です。確かに政府の労災保険は治療費や一定の補償をカバーしますが、遺族への慰謝料や逸失利益といった上乗せ部分まではカバーしきれません。したがって、労災保険の給付が決定したかどうかと、企業が損害賠償責任を問われるかどうかは、別問題なのです。

なぜ熱中症リスクは「現場対策だけ」では守れないのか

企業は、労働契約法第5条等を根拠として、労働者の生命・身体の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。

したがって、熱中症の事故が発生した場合、この義務を履行していなかったとして、遺族から損害賠償請求を受ける可能性があるのです。

先ほどの建設現場の事例が示すように、「水分補給をさせていた」「休憩を取らせていた」という事実があっても、それだけでは安全配慮義務を十分に果たしたとは言えません。法律が求めているのは、前述の3つの管理を、現場の実態に合わせて漏れなく整えていることです。いずれかが欠けていれば、いざ事故が発生した際に、企業の過失がこれまで以上に厳しく問われることになります。

\ あなたの会社の熱中症対策は大丈夫? /

無料・簡単3分でできます!!

「熱中症対策をどこまでやれば十分なのか」が分からない、というお悩みに

ここまで読んで、「自社の対策はどのレベルにあるのか、正直よく分からない」と感じた経営者・労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

水分補給や休憩はさせているが、これで法的に十分と言えるのか

万が一事故が起きたとき、自社だけで対応できる自信がない

こうした不安は、決して珍しいものではありません。法律で求められている内容と、現場で実際に行っている対策との間にギャップがあるかどうかは、客観的に確認してみない限り分からないものです。

自社の熱中症リスクを診断してみませんか

そこで、自社が、先ほどご紹介した3つの熱中症対策管理(作業環境管理・作業管理・健康管理)をどの程度実行できているのかを確認できる「熱中症リスク診断」をご用意しました。

いくつかの質問に回答するだけで、自社の対策状況を客観的に把握でき、診断結果に応じたお役立ち資料もお届けします。今年の夏を万全の体制で迎えるための第一歩として、ぜひご活用ください。

\ あなたの会社の熱中症対策は大丈夫? /

無料・簡単3分でできます!!

まとめ

熱中症対策の義務化は、すでに施行されている現在進行形のルールです。対策の有無、そしてその対策が法律の求める水準を満たしているかどうかが、今後の企業リスクを大きく左右します。まずは自社の現状を正しく把握することから始めてみませんか。

参考出典(本文内で使用したデータ・事例)

  • 厚生労働省「令和7年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
  • MS&ADインターリスク総研株式会社「労災リスク・インフォメーション」
  • 厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」
  • 厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害事例 No.100740」
  • 三井住友海上火災保険株式会社「保険での対策も見直してみませんか?」
  • e-Gov「労働契約法」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次